ある店主の夢への軌跡 vol.1

『地域の課題解決や活性化』そんな堅苦しい言葉でどうにかなることばかりじゃない。
シャッター商店街に『生活の一部や豊かに輝く瞬間を大切にしてきた』ライフスタイルショップがある。
堅苦しく安直で退屈な言葉では語ることのできない『商店街』。
その一画で、虎視眈々と抱き続ける店主のこの街への想いと、洗練されたセンスで、この秋ひとつのイベントが開催される。

「手紙社+kata kataさんが私のお店にやってくる!」


遡ること4年半前。
そう、あれは2017年2月4日at京都市勧業館みやこめっせでした。

私は念願の手紙社さんのイベント「布博(ぬのはく)in京都」を訪れていました。 
Zakka店店主としてではなく、いちZakkaファン手紙社ファンとして。

【布博】とは?

テキスタイルと手芸の祭典。

丁寧な手仕事でつくられる刺繍、美しきテキスタイル、毎日身に着けたくなる服やアクセサリー、作る楽しみを広げる手芸素材など、布にまつわるあらゆる作品が一堂に会します。

手紙社 『布博』のページより


 ー あ、そうだ、先に自己紹介をお願いします!

申し遅れましたー!(笑)

CHOCOTTOさんから描いてもらったお気に入りのポートレート

 私、髙橋共子と申します。 大分県佐伯市の仲町商店街でライフスタイルショップをしています。 「東京生活はもういっかな」と思い始めた18年前、母親の「きょうちゃんの好きな事を家(梅田家具店)の一角でやってみらん?」をきっかけに帰郷しました。 日常をワンランクアップさせるような日用品、大切な人に贈りたいギフトなど販売しています。 趣味はフィギュアスケート観戦と面白そうなことや雑貨探しでございます。 

 ー ありがとうございます。布博のお話でしたね。

そうそう。決して近くない会場へ、早朝から電車・新幹線と乗り継いで行ったんです。
久しぶりの京都。

長旅もワクワクがあればなんのその。

はやる気持ちで会場へ踏み入れた途端、女子ならば(いや男子も)テンション爆上がり可愛い!素敵!の数々が目の中に飛び込んできました。あの時のワクワクは今でも鮮明に覚えています。

2017年2月4日布博in京都の会場(人だかりが落ち着いたのでパチリ📷)

心臓がはちきれんばかりに高鳴り、小躍りしたくなる衝動を抑えながら

早く選ばねば売り切れてしまう作品たちを目掛けお買い物モードへ。

 ー 布博のページ見ました。作家・デザイナー・ブランドなど、本当にたくさんあるんですね!こんなにたくさんの中からどうやってお気に入りを見つけるのですか?


私は好きな雑貨の系統に偏りがありません。
どんなジャンルの中にも自分の「好き!」と思えるポイントが自然と胸をキュンと締め付けるんです。心に静寂や温かさが広がるような使っていて心地良いもの・女性らしい美しい輝きを宿すもの・持っているだけで気分が上がるものなど、想像を超えた表現の美しさ面白さをかぎ分けながら作品を見ていきます。そして作者との会話や雰囲気もセレクトに影響します。

布博ではとにかく片っ端から見てまわりました。

雑貨の系統の好みに偏りがない分、どんなタイプのお客さんにも自分がセレクトしたものを胸を張っておすすめできるので、お客さんとの距離が近いまちの雑貨屋さんとしてはとてもいいことだな、と思っています。


 ー 確かに。共子さんのお店って、空間としては統一感があって洗練されているのに、
ひとつひとつの品が個性的ですよね!好きな作家さんとかブランドとかあるんですか?

店内にある作家さんやブランドは星の数ほどあるものの中から選んできたので全部好きです。

なので、お店で扱わせてもらっている作品はもちろん、『 YUI MATSUDA』さん 『岡崎直哉』さん 『mintdesigns』さん の作品は大好きです。

(他にもたくさん名前を挙げてくれたのですが、勝手に抜粋しちゃいました。実際にお店に行ってお話しする楽しみにとっておいてください♪)

 ー あ〜!私はますこえりさんの作品、共子さんのお店で出会ってからまんまとファンになりました!
どの業界でもそうかもしれませんが、ネットで膨大な数の作品に手が届くようになった分、
選ぶの本当に大変だし失敗もあるから、いつ行っても信頼できる品が置いてあるお店、本当にありがたいです。
ところで、この布博を知ったきっかけって何だったのですか?

手紙社さんとの出会いは私の好きな雑貨屋さんの1つ、別府のSPICAさんへ行った時に購入した手紙社さん発行の「LETTERS」というマガジンでした。

この本の副題って「手紙社が選ぶカフェ、雑貨、美しいもの」ですよね。普通、表紙はパフェとか雑貨だと思うじゃないですか。後ろ姿の男性の絵が表紙なんですよ!良い意味での違和感に興味そそられまくりました。早くその先を覗いてみたい!と。
ドキドキしながらページをめくると「いつか行ってみたい」「手にしたい」と強く惹かれる作り手さんの作品や場所が展開されていました。
「なんで私の好きがこんなにも詰まってるのぉぉ!」と(笑)。

 ー いいですね!その時のキラキラ輝く共子さんの瞳が想像できます!

その時の手紙社さんは私にとって、近づきたいけど物理的にもチャンスが無い遠い憧れの存在でした。
そこから布博の開催を知り。東京でのイベントがメインだと思うのですがタイミングが合わず京都に行きました。
取引先になったのは布博に行った後、引き続きHPをストーカーしていたらタイミングよくトレードショー(卸契約の機会)開催にこぎつけたのです。いやったー\(^o^)/ いつか東京開催の手紙社さんイベントへも行ってみたいな。

 ー お〜いい感じ。トントン拍子ですね!

少しずつだけど、好きなものをちゃんと大切にしていたらこんな風に進んでいきました。
そうそう、布博では好きな布製品や雑貨ももちろんですが、その場の空気感にシビれました。

ひと・ヒト・人!の中をかき分けひと通り堪能したころ、どこからか心地よい音色が聞こえてきて♪
フラフラと吸い寄せられるように向かったその先には美しいテキスタイルをバックにハープとアコースティックギターの音色が響く音楽ステージが広がっていました。

YUI MITSUDAさんのテキスタイルをバックに演奏するtico moonさん(ここからリンク先のyoutubeを流しながら読み進めていって欲しい!)


その光景に目を細めながら
いつか、、、こんな素敵なイベントが地元でできたらな~
と呟いたのを今でも鮮明に思い出します。

 ー 実に4年半も共子さんの中で温めてきた企画なのですね!楽しみ。
当時を振り返って、佐伯での開催に足りなかったものって何だと思いますか?

私自身の気力体力が不足していました。

というのは、とっても元気だったうちのお店の中心的人物の母が癌で2009年に永眠しました。
オープンしてから4年くらいは小さなフェアとか一緒にしていたのだけど…。
母が永眠した後、父親が徐々に認知症になったり…と営業するだけで精一杯な所もあったの。
そして大好きなお父さんも去年永眠しました。

 ー そうだったんですね。別れは悲しいし、共子さんやご家族の努力や苦労は計り知れないけれど、家族の近くにいるって、おうちを継ぐっていう覚悟みたいなもの、感じます。

実は、この話はごく身近な人以外に話したことないんです。隠していた訳じゃないけれど、私事だし、と切り離して考えていたところがあるのかも。


 ー 共子さんっていつもおしゃれでキラキラしているから、そんな大変な状況があったなんて思いもしませんでした。すみません。なんだか、かっこいいです。

でも…気力・体力以外にも全て足りていなかったですね。
まず遠くにいる作家さんに実際に会わず電話やメールでコンタクトを取る自信がなかったです。
売上を上げる自信もなかったし。
せめて地元の商店のイベントには関わっていこうと思ってやってきたかな。

 ー きっと、とてもがんばりましたね…お店、続けるだけですごいことです。
4年半大切に温めたイベント、どんな風にしたいですか?

いきなり手紙社さんのイベントのようにはできないけど、私が布博で感じたトキメキにつながるようなイベントにしたいですね。
興味を持って下さった人すべてに来てもらいたい。そして、今まで支えてきてくれた皆さんへの恩返しが少しでも出来ればと思います。
手紙社さんも作家さんも ”部員” さんも皆温かいゆかいな人たちなんですよ。
それって周りの人を優しく幸せにしてくれるんです。そして勇気をもらえる。
だからこのイベントを訪れた人が素敵な作品に出会って、ときめいて、楽しんで、ゆかいな仲間たちと交流して、幸せの余韻に浸ってもらえればこの上ない喜びです。
あと!この仲町商店街近辺の 『今ある良さ』をこのまちの人にも外から来てくれる人にも伝えられたらいいなと思います。

 ー めちゃくちゃよくわかります。これはただのオシャレ販売会イベントじゃないですね。
作品・商品ひとつにしても作る人や関わる人、その品を愛でる人といった感じで
ストーリーのどこを切りとっても人が見えるのがこのイベントなんじゃないかと勝手に思っています。
(つい熱くなってしまいました)
実は、共子さんに薦められて私も ”部員” になってみたんです。
あ、部員のお話は結構重要なのでまた次回にとっておきましょう。

【手紙舎フェア+kata kata展】
 日時:2021年10月22日(金)~31日(日) 10日間
 会場:Zakka店 La vie douce(ラヴィドゥース)にて
 手紙舎+kata kataさんのフェアと展示販売

vol.2へつづく・・・

4年半前、tico moonさんと布博での思い出の一枚。手にはkata kataさんの布。


この文章の話し手:高橋共子
     聞き手:なかむらかずみ

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