屋形島ごはん – 前編 −

「おいしい」のために生きているわたしの日々の中で印象に残ったもの・ことの記し

– 共同キッチン付き素泊まりゲストハウスで作る、季節のごはん –

佐伯市蒲江の港から約10分のところにある離島、屋形島。緋扇貝の養殖が盛んで、SUPやシュノーケリングなどが体験できる

屋形島の港にて 珊瑚や小さな魚が美しい
緋扇貝の養殖の風景

他にも、自然の音を聞きながら、ゆっくり頭の整理をしたり、心地よい風にあたりながらヨガをしたり、深呼吸をしたり…屋形島での楽しみ方は様々ある

初めて屋形島を訪れたのは、昨年の8月の終わり、「SUPをしよう」と友人と日帰りで行った時だった。SUPのガイドは、屋形島ゲストハウスのオーナーである後藤さんだったので、荷物を置かせてもらったり、休憩をさせてもらったりと、日帰りだったけどゲストハウスにお世話になった

ゲストハウスの交流スペース 本はオーナーの後藤さん自前のもの

佐伯市内、といえばそうだけども、離島へ行くという、日常から少し離れる感覚や、島での素晴らしい景色や体験、そして、島時間をゆっくり味わうことができる屋形島ゲストハウスという場所があることなど、その1日だけで屋形島に完全にほれ込んでしまった

休憩で使わせてもらった交流スペースからは、雰囲気の良い共同キッチンが見えた。ここでごはんを作って食べて、時間を気にせず過ごせたらすごく良さそうな…「次回は泊まりで来よう。」そう思い、余韻に浸りながら島を後にした

少し先だと思っていた「次回」は、突然、1週間後にやってきた。急に仕事の休みが取れて、天気も良さそうだったので、ゲストハウスに連絡をしてみると、宿泊OKとのこと。急な平日休みだったので、今回は1人で行くことに

屋形島にお店はないため、必要な食材は事前に買いそろえ、調味料は小さい容器に入れて持って行った。クーラーボックスに食材をつめこみ、宿泊の荷物やカメラ、ヨガマットなど、そこそこな大荷物をかかえて船に乗り込んだ。

ちなみに、屋形島ゲストハウスのキッチンは、調理器具や食器がそろえられていて、調味料もいくつか自由に使って良いものがある。あとは自分が食べたいものや、ある程度の食材を持っていけば、十分な環境が整っている

小さな調味料たち

この時はたまたま他に宿泊する人がおらず、1人旅とはいえ、ご飯は1人で食べるのは寂しいので、晩ごはんはゲストハウスのオーナーの後藤さんと一緒に食べてもらった

第1回目の屋形島ごはんは、後藤さんに緋扇貝の白ワイン蒸しを作っていただき、私は、豆腐とアボカドのサラダ、にんじんのたらこ炒め、出発前に仕込んでおいた煮卵を。屋形島の緋扇貝を食べたのは、きっとこの時が初めてだった。ぷりぷりの身に、旨味がぎゅっとつまっていて、それはもう、すごく美味しかった

この日はゆっくりのんびり、ごはんを食べながら、ゲストハウス立ち上げの話を聞いたり、これからやってみたいことなどを、お互い話して聞いて、とてもいい時間を過ごさせていただいた

翌朝は、5時半に起きて、朝のSUPへ。水平線から昇る朝日を、なんともぜいたくなことに、海の上で拝んだ。自然の中に身をおくことは、自分自身をリセットできるような感覚がある

清々しい気持ちでゲストハウスにもどり、身支度をして、朝食の準備へ。朝食は、前の日の夜の残りや、余った食材でお味噌汁を。小さい緋扇貝の箸置きがかわいい(飾りとして置いてあったものを拝借)

ごはんのあとは、帰りの船の時間までのんびり過ごし、帰ってからも、写真を振り返りながら、長く余韻に浸った

そして、島時間での楽しさと心地よさが忘れられず、1ヶ月後、再び屋形島1人旅へ

9月の終わりは、彼岸花がきれいに咲いていた。夏の名残を感じつつ、風が涼しかった。海の上で夕日を見たいと、夕方に予定していたSUPは、風が強くて断念。あいた時間は、海を前に、本を読んで過ごした

この時の屋形島ごはんは、ちょっと秋の雰囲気に。梨の豚肉巻き、かきたま汁、小松菜のおひたし、にんじんと竹輪の甘酢あえ、さつま芋のかぼす煮。そしてこの時も、後藤さんが緋扇貝の酒蒸しを作ってくださった

ゲストハウスの食器は、インドやネパールの食器のような、アジアンテイスト。家でいつも作る料理も、器が違うと雰囲気が変わる。普段と違う台所で料理をするというのも新鮮で、道具のひとつひとつが使いなれたものとは違うぶん、逆にいつもより丁寧に、食材や道具と向き合えるような気がする

行くたびに、新しい発見がある“屋形島ごはん” 後編では、「掛け合わせて生まれるごはん」がテーマになりそうです。

Special thanks.屋形島ゲストハウス https://instagram.com/yakatajimaguesthouse

written by 佐郷仁美(https://www.instagram.com/daidai_syokutaku/):ふだんは管理栄養士として働きながら、料理イベントの企画・運営など「橙」として活動中。写真が趣味で、イベントなどでカメラマンをすることも。

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