「おいしい」のために生きているわたしの、日々の中で印象に残ったもの・ことの記し
季節の手しごと。
おおらかな心持ちや、丁寧な暮らしを思い浮かべる、何とも憧れる響きの言葉だ。
一時期にたくさんとれる旬の食材を、余すことなく、時間をかけてじっくり味わう
古き良き楽しみ方のようにも感じる。
数年前から私も、すこしだが手軽にできる手しごとをするようになった。
初夏は手しごとが色々ある。
庭のびわの木に食べごろの実がなれば、せっせと皮をむき、種とわたを取り、
鍋で炊いてゼリーやコンポートに。
赤しそが手に入ったら、くつくつと煮て、しそジュースに。
そして、初夏の手しごとの代表とも言えるのが、「梅しごと」。
今年は、いつも仕込む梅酒に加えて、初めて梅ジャムを作ってみた。
アク抜きのため水に漬ける。銀色に光る梅がまた美しい。
「梅は一瞬で煮えるよ」と前に聞いたことがあり、確かめてみたかった。
鍋に梅を入れ、浸るくらいの水を注ぎ、火をつける。ふふ、楽しみだ。
沸騰までふたをして待つところだが、梅が気になって何度か鍋をのぞいてしまう。
だから、なかなか沸騰しない。
ちょっと鍋から気が離れていたら、ふわっと、桃のような甘い匂いがしてきた。
鍋をのぞいてみると、そこには、つやっとぷっくり煮えた梅たちが。
一瞬を逃してしまったようだが、きっと、聞いていた通りの早さで煮えたのだろう。
すっかり煮えた梅は、飴色がかった黄緑色になり、なんとも美味しそう。
味見をしようと思ったが、「梅はすっぱい」という先入観が邪魔をして、ためらってしまった。
あとは、種を取り出し、ペーストにして、砂糖を加えて煮たら、梅ジャムが完成。
梅ジャムはたくさんできたため、その日会う予定だった人たちにお裾分けした。
びわゼリーやコンポートを作った時も、たくさんできたからお裾分けした。
そういえば、梅酒も梅が多かったからお裾分けの分も仕込んだ…
季節のものは、期間限定だからとついたくさん作ってしまう。
そしてそれをきっかけに、誰かと季節のものを共有し、話がはずむ。
こういったやりとりを含めて、旬を楽しむことは、素敵なことだなと思う。
来年も梅ジャムを作ったら、その時は、ためらわずに煮ただけの梅を食べてみようと思う。
季節はめぐる。
written by 佐郷仁美(https://www.instagram.com/daidai_syokutaku/):ふだんは管理栄養士として働きながら、料理イベントの企画・運営など「橙」として活動中。写真が趣味で、イベントなどでカメラマンをすることも。