GWに「Taco Night」で出会った友人たち

2023年5月6日

佐伯市から「Taco Night」と呼ばれるパーティーがSTORAGE ROOMにくると聞いて、足を運んでみた。独自のアパレルグッズを販売する「シャンハイクラブ1990」と「i wanna go to the beach」に付随する形でタコスとカレーを提供する催しらしい。そして、今回は自主制作のビデオ上映と、ロックバンドによるライブがあるという。

会社勤めの傍ら、主に大分市内のイベントに顔を出すのが私のライフワークだ。いつものようにインスタグラムで情報収集していて、この「Taco Night」の告知に辿り着いた。フードの提供や、アパレルグッズの販売はよくあるものの、その両方が合わさった形で開催されるイベントは決して多くない。しかも、上映会とバンド演奏まで付いてくる。興味を惹かれて、小雨の中でも賑わうGWのかんたん港園を過ぎ、いつもお世話になってるSTORAGE ROOMへ急いだ。

入り口には青を基調にした「ワナビー」のブースがあり、その奥にシックでクールな衣類を並べた「シャンクラ」が、キッチンでは口髭を蓄えた兄ちゃんと、なぜか赤いフンドシを履いてコック帽を被った朴訥な出で立ちの料理人が忙しそうに動き回っていた。スクリーンにはスタイリッシュな田舎の映像が投影されている。

とりあえずカレーを注文して店内を見回ってみる。インスピレーションをそのまま創作に持ち込んだと思われる「ワナビー」と「シャンクラ」のグッズは、見ているだけで楽しかった。商品の陳列に関する空間演出は、むしろ直感だけではない思考が凝らされていて、そのバランス感覚も面白かった。

キッチン横には試作中のZINEや、近く佐伯市で行われる公演の前売りチケット、ラーメン屋のキーホルダーなど遊び心に満ちたアイテムが置かれていて、「ワナビー」「シャンクラ」の統一されたコンセプトとは真逆の混沌さがあった。この両者のコントラストが「Taco Night」なのだろうと思った。

カレーは豆とチキン、豚肉とパインのハーフ&ハーフ。料理人の奇抜な風貌から、もう少しパンチの効いた味を期待していたが、普通に美味しくて正直なところ肩透かしだった。タコスも気になったが、こちらも普通の味なんだろうなと思って注文せずにビデオ上映を待った。

ビデオは彼らの友人「リンタロー」との絆を描いた内容で、身内でない私からしたら付いていけないところもあったが、とても丁寧に作られていて、鑑賞には耐え得るクオリティは担保されていて助かった。上映後、映像の監督らしい人物が、ビデオの主人公であるリンタローをビデオ通話でスクリーンに映し出し、会話を始めた。「感動しちゃった」と笑うリンタローの笑顔に、釣られて私も優しい気持ちになった。

間もなく、「サイキシミン」という佐伯市のバンドがリンタローに語りかける。ビデオでも印象的に使われていた曲を歌い始めると、スクリーンのリンタローが思わず目頭を押さえて、感極まっている。きっと彼らにとっては、思い出の歌なのだろう。昔の友人を慰めるような、とても暖かい曲だった。この辺りから、会ったことも話したこともない「リンタロー」という青年に、急に会いたくなって驚いた。まるで自分も彼らと同じ時間を過ごしてきたような、不思議な感覚に襲われたのだ。なるほど、あのビデオはこのライブの前振りだったんだな、と気付いた。スクリーンに映し出されたリンタローと、リンタローに向けて歌い続けるバンドを交互に観ながら、彼らの友情に自分も加担しているような気持ちになって嬉しかった。

思わず、買うつもりはなかったタコスをテイクアウトで買って、会場を後にした。マルシェで賑わうかんたん港園を一通り巡って、はずれのベンチに腰掛ける。やっぱりタコスは普通に美味しくて、わざわざ買わなくてもよかったな、と反省したが、なぜかリンタローという青年が今日の「Taco Night」にいる姿を連想してしまって、一人で笑っていた。

text & photo by 菊姫マン:大分市在住の会社員。趣味が高じてライターとしても活動中。

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